調査会社やコンサル企業の予測によると、メタバースは将来的には1兆ドル〜数兆ドル規模の市場になると考えられています[1]Forbes:Here Are Morgan Stanley’s Top Stock Picks For Investing In The Metaverse。
それだけの巨大市場になると、たくさんの雇用が生まれるはずです。
じっさい、メタバースではすでに新しい職業がどんどん誕生しています。
この記事ではメタバースによって生まれた新しい職業を11種類紹介します。
あわせて、番外編として未来に生まれそうなメタバース関連の職業も紹介します。
メタバース建築家
メタバース建築家はメタバースの土地の上に建築物を建てたり、デザインする仕事です。
建物とは、具体的には
- オフィス
- 店舗
- 商業施設
などのことです。
じっさい、すでにメタバースでは有名建築家(建築事務所)が企業向けのオフィスや商業施設をデザインした事例がいくつかあります[2]dezeen:BIG designs virtual office in the metaverse for Vice Media Group。
メタバース上の建築物は、当たり前ですが耐震構造や耐火性などは求められません。
現実世界の建築で求められる制約が無くなります。
だから、建築家は自分が作りたい建築物を作ることができます。
事例を紹介すると、アメリカのメタバース建築事務所は1案件で最大3,000万円ほどの金額で依頼を受けています[3]Capital Com Bel:Voxel Architects builds virtual houses for the metaverse。
現実世界の大規模な建築プロジェクトと比べたら低いですが、それでもデザイン関係の仕事としてはかなり高い報酬を得ています。
メタバースで活動する不動産デベロッパーが現実世界と同じように
メタバース上の土地+建物
をセットで販売した、という事例もあります[4]finLedger:Spanish proptech pair set up virtual real estate office in the metaverse Decentraland。
このような事例が増えるにつれて、メタバース建築家の需要はどんどん高くなるはずです。
メタバースセラピスト
メタバースセラピストはメタバース内でカウンセリング・セラピーなどを行う仕事です。
医療業界からもメタバースは注目されており、世界中の医療機関がメタバースでの医療行為の可能性を探っています。
日本でもメタバースクリニックというサービスがVRCHATで運営されています。
ただ、メタバースでのカウンセリングなどが医療行為に該当するかどうかは法律次第です。
なので、法律的に問題が無い形でセラピストとして収入が得られるかどうかは不明です。
※紹介したメタバースクリニックは広告収入で運営されており、利用者からはお金を受け取っていません
アバター案内スタッフ
アバター案内スタッフはメタバースに来た人を案内する仕事です。
具体的には、メタバースに来た人に対してメタバースの
- 使い方
- 楽しみ方
などを案内したり、説明する仕事です。
いま、リアルな世界にある様々な場所・空間が次々と3D化・メタバース化されています。
例を挙げると
- 飲食店[5]Cryptoflies:Panera Bread Is Set to Launch “Paneraverse”, a Virtual Restaurant with Real-Life Food Delivery
- ショッピングモール[6]Forbes:The Future Of Virtual Shopping Malls
- 転職フェア[7]Business Insider:I went to a metaverse recruitment fair with 30 companies and 200 attendees. The avatars were creepy but I liked it — take a look around.
などがどんどんメタバース化されています。
これだけではありません。
世界中の大人気のあの有名テーマパークもメタバースへの進出を準備している、と言われています[8]DIGIDAY:The bridge-builder: Why Disney tapped a former theme park executive to lead its metaverse strategy。
となると、これらのメタバースに来た人を案内する人が必要になります。
「案内する人」がアバター案内スタッフ、という訳です。
日本でもすでにアバター案内スタッフの雇用や求人事例はあります[9]PANORA:メタバースデビューを支援するバーチャルスタッフを募集 HTC NIPPONアバターワークでアルバイト。
まだ求人数は少ないですが、募集を見かけたらぜひチャレンジしてください。
アバター店員(接客員)
アバター店員は、メタバース内にあるお店などに来たお客さんを接客する仕事です。
なので「アバター接客員」とも呼ばれます。
仕事としては先に紹介したアバター案内スタッフと似ています。
けれど、アバター店員の場合は勤務先はメタバース内にある店舗です。
いま欧米の企業はどんどんメタバースに出店しています。
ただ店舗を構えるだけでなく、メタバースで直接ユーザーに
- デジタルアイテム
- 自社商品
を販売する「D2A(ダイレクト・トゥ・アバター)」と呼ばれる動きもあります。
このような動きが活発になれば、アバター店員の需要はどんどん増えます。
日本ではメタバースでのアバター店員の採用事例などはまだありませんが、事例ができるのは時間の問題です。
接客等の仕事はメタバース化・3D化されやすい分野ですので、向こう数年の間に日本でもどんどん導入されると思います。
Web3・メタバース向けNFTデザイナー
Web3・メタバース向けNFTデザイナーは、メタバースやWeb3のサービスで活用されるNFTをデザインするデザイナーです。
具体的には
などをデザインする仕事です。
※他にもさまざまな種類のNFTをデザインする機会があります
ガードナーという調査会社は
「2026年までに25%の人がメタバースで1日1時間以上過ごす」
と予測しています[10]Gartner:Gartner Predicts 25% of People Will Spend At Least One Hour Per Day in the Metaverse by 2026。
つまり、未来の私たちは毎日の生活の中で
- リアルな世界(現実世界)
- メタバースの空間(仮想世界)
を行き来するようになるのです。
となると、メタバースとはいえ毎日同じ格好で過ごす訳には行きません。
人々はNFTで出来た自分のアバターや、個性や特徴に似合う服を買い、それを着るようになるでしょう。
アメリカのクラウドソーシング大手Fiverr(ファイバー)は、フリーランスで働く人の3人に2人がNFTの制作で収入を得ているというデータを発表しています[11]Fiverr:Freelancers, NFTs & the Metaverse: Examining the Opportunity。
Fiverrは、2021年第3四半期から第4四半期の3ヶ月間で
- NFT関連の仕事の依頼数は278%増加
- NFT関連の仕事でフリーランサーが稼いだ金額は378%増加
このようなデータも発表しています。
2021年の市場規模が5兆円[12]WIRED:An NFT Bubble Is Taking Over the Gig Economyとも言われているNFT市場は、スキルシェアの分野にも多大な影響を与えていることがわかります。
なので、NFTのデザインに関連するスキル・知識・経験を持っている
などには沢山の仕事がありそうです。
じっさい、Fiverrには約5万件ものNFTに関連する仕事があるようです[13]WIRED:An NFT Bubble Is Taking Over the Gig Economy。
FiverrのYoav Hornung氏は
「半年前を思い返すと、当時は5桁(1万件)もなかったと思います」
(翻訳は著者によるもの)
このように語っています。
この記事が公開されたのは、2022年2月のことです。
つまり、2021年後半から2022年の頭にかけてNFT関連の仕事数は5倍以上に増えたのです。
日本のクラウドソーシングにもNFTデザイン関連の仕事はありますが、報酬の単価はあまり高くありません。
なのでFiverrに登録し、海外クライアントから仕事をもらうのがおすすめです。
Fiverrは英語のサービスですし、仕事を依頼するクライアントの多くは英語圏の企業です。
もちろん担当者も外国人なので、基本的には仕事のやりとりは英語です。
なので、日本人がNFTデザインの仕事をもらうのは簡単なことではありません。
それでもFiverrというか、海外からの仕事はかなり魅力的です。
なぜなら
- 世界的なインフレによる報酬の高騰
- 急激な円安ドル高
などにより、日本人にとってドルで受け取る報酬はかなり魅力的な価格になっているからです。
それに、高い価格で取引されている有名なNFTには、日本文化の影響を感じさせるものが驚くほど多いです。
なので、意外と最新のアニメや日本文化に詳しいデザイナーは歓迎されるかもしれません。
DeepLやGoogle翻訳などのツールをつかって、英語の文書・サイト等よく読んでいる方はぜひFiverrに挑戦してみてください。
日本は少子高齢化が進むので長期的に見たらかなり辛い状況ですが、海外に目を向ければ状況は変わります。
未来に備えて、いまのうちから取引先を海外まで広げれば、将来の安定の確保につながるはずです。
アバターデザイナー
アバターデザイナーはメタバースユーザーから依頼をもらい、アバターを個別にカスタマイズマイズする仕事です。
サービスによって多少の違いはありますが、メタバースではユーザーはアバター姿になります。
アバターにも好き嫌いがあり
「みんなと同じアバターは嫌だ」
「他の人よりも可愛いアバターが欲しい」
こんな風に思う人はたくさんいるようです。
このような人たちから依頼を受け、その人が欲しい理想のアバターを作るのがアバターデザイナーです。
美容整形と似ていることもあり、中国ではアバターデザイナーは「電子美容整形医」と呼ばれています。[14]人民網日本語版:メタバースで「自分を設計」 アバターカスタマイズにお金を払う?。
人民網日本語版の記事によると、アバターデザイナーには月に50万円以上稼いでいる人もいるそうです。
いま、Tinderなどの人気マッチングアプリもメタバース進出を考えています[15]Reuters:Welcome to the Tinderverse: Tinder’s CEO talks metaverse, virtual currency。
メタバース版マッチングアプリでは、おそらく利用者はアバターで異性と出会います。
なので
「いいね!をもらえる数が3倍になるアバター」
などを作れるアバターデザイナーがいたら、その人のもとに依頼が殺到し、大金が稼げるかもしれません。
メタバース不動産投資家
メタバース不動産投資家は、メタバースの土地(仮想不動産とも呼ばれます)に投資する、メタバース版不動産投資家です。
具体的にはメタバース上で
などを行いお金を稼ぎます。
メタバースの不動産への投資では、土地以外にも
- マンション・アパート[16]Worldwide Webb:https://www.webb.game/
- 道路[17]Decentworld:https://decentworld.com/
など、投資できるものはどんどん増えています。
投資なので損をすることもありますが、上手くいけば資産は大きく値上がりします。
カナダではメタバース不動産投資向けの住宅ローンもあるくらいで、世界中の投資家からのメタバース不動産への興味・関心は急速に高まっています。
コミュニティマネージャー
メタバースによりますが、Web3関連の機能があるメタバースでは
「コミュニティマネージャー」
という重要な職業があります。
※「Web3コミュニティマネージャー」と呼ばれることもあります
コミュニティマネージャーはその名の通り、自社のサービスと関連するコミュニティをマネジメントする仕事です。
コミュニティの例を挙げると
- Discord
- Telegram
- Medium
などです。
コミュニティマネージャーはこれらのツールを使い、自社サービスに興味がある人やファンを増やします。
さらに、コミュニティが健全になるよう、コミュニティ参加者とコミュニケーションを取るのが仕事です。
なので、仕事内容は
- ソーシャルメディア担当者(運用者)
- PR・広報
などと似ています。
日本企業ではコミュニティマネージャーの求人募集はとても少ないです。
もし求人情報サイトでみかけたら早めの応募がおすすめです。
メタバース不動産代理店
メタバース不動産代理店は、メタバースの土地を買いたい人や企業に対して
- どのメタバースの土地を買うべきか
- メタバース内のどの土地を買うべきか
などをアドバイスしたり、売買を仲介する仕事です。
この仕事は日本の不動産仲介会社と似ていますが、ただ仲介するだけでなく
- コンサルティング
- アドバイス
なども行います。
例えば、アメリカのMetaMetric Solutionsという企業はメタバースの土地取引のデータを収集しています。
そして集めたデータを分析し、その結果をもとに土地を買いたい企業に対してコンサルティングを行なっています。
メタバースの土地の価格は2021年に一気に値上がり、2022年になってもそれほど下がっていません。
もっとも土地の平均価格が高いメタバースだと、最低でも30万円以上払わないと買えません。
これでは企業はともかく、個人が気軽に買える値段ではありません。
もし失敗したら大変ですからね。
なので土地購入のアドバイスをする、メタバース不動産代理店のような仕事も需要も徐々に増えていくはずです。
P2E(Play-to-Earn)ゲーマー
P2E(Play-to-Earn)ゲーマーはゲームをしてお金を稼ぐ仕事です。
ゲームに費やす時間と情熱をお金に交換する仕事、とも言えます。
2021年はAxie Infinity。
2022年はSTEPNが大ヒットしました。
この2つのゲームによって、世界中でP2Eゲーマーは増えています。
ただ、必ず稼げる訳ではありません。
損をする人もたくさんいます。
全体的に見るとミドルリスク・ローリターンなので、お金の稼ぎ方としては優れていません。
もし遊ぶなら、このことを忘れずに取り組んでください。
NFT転売屋
NFT転売屋とは、NFT(非代替性トークン)を安く仕入れ、高く販売して儲けを得る仕事です。
NFTとはデジタルアイテムなので「デジタルアイテム転売屋」と表現した方がわかりやすいかもしれません。
NFTはNFTマーケットプレイスと呼ばれるサービスを使えば簡単に売買できます。
しかも、世界中ユーザーに対して販売できます。
なので
- 抽選に応募するなどして安く、もしくは無料でNFTを手に入れる
- NFTマーケットプレイスに出品し、世界中に販売する
ということが簡単にできます。
NFT転売屋は、いわゆる「せどり」の一種とも言えますが
- 仕入れたモノを管理・保存する場所・倉庫等が不要
- 売れたモノを梱包・郵送する手間が不要
などの特徴があるので、むしろこちらの方が簡単だと思います。
【番外編】未来に登場するメタバース関連の職業
ここまで紹介したのは、もうすでに存在している職業です。
けれどメタバースはまだまだ黎明期です。
なので向こう数年でメタバース関連のたくさんの職業が生まれるはずです。
メタバース市場が拡大すれば、以下の職業はまず間違いなく誕生します。
- メタバースマーケター(メタバースマーケティングの専門家)
- メタバースツアーガイド(メタバース旅行のガイド)
- MUXデザイナー(メタバース・ユーザー・エクスペリエンス・デザイナー)
- メタバース教師(メタバースで学問を教える教師・講師)
- メタバース教材クリエイター(メタバース専用の教材を作るクリエイター)
- メタバース警備員・警察官
メタバースでのこれらの仕事に興味がある方は
- まず名乗ってしまう
- そしてやってみる
こんな風に挑戦することをおすすめします。
引用・脚注
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