ニュースの記事などで
「メタバースは誰もやっていない」
「メタバースは失敗する(した)」
「メタバースはオワコン」
こんな話や意見を聞くことがあります。
これらが真実なのかを確認するため
- メタバースへの注目度の推移
- サービスのユーザー数
などを調査しました。
結論としては、利用者がいる・いないはメタバースの定義次第です。
メタバースを狭く定義したらユーザーがいない(少ない)と言えます。
メタバースを広く定義したらユーザーがいる(多い)と言えます。
なので
「メタバースは誰もやっていない」
と一言と断定するのはかなり乱暴なことではないか、と思います。
メタバースは本当に「オワコン」なのか?
メタバースはいわゆる「オワコン」なのでしょうか。
まずはメタバースに対する注目度を確認しましょう。
使うのはGoogleトレンドです。
Googleトレンドは、Googleで特定の言葉が検索された回数がわかるツールです。
検索回数が増えた=注目度が上がった
と解釈できます。
今回はGoogleトレンドで
- 日本における「メタバース」の検索数
- 世界全体での「Metaverse」の検索数
この2つをチェックしました。
最初に日本における検索数の推移を紹介します。
2021年10月頃に急に注目度が上がっていることがわかります。
これは、FacebookがMetaへの社名変更を発表をしたタイミングです。
注目度に関しては、その後もアップダウンを繰り返しながらも急下降はしていません。
つまり、依然としてメタバースへの注目度は高いままです。
次は世界全体での「Metaverse」の検索数を見てみましょう。
こちらも同じタイミングで急上昇しています。
その後は緩やかな下降傾向です。
それでも、盛り返すような気配があり「オワコン」という程ではありません。
ちなみに、下の画像は音声SNSとして2021年1〜3月くらいに流行した「Clubhouse」の検索数です。
急上昇後に急下降していることがわかります。
これだけ急に下降し、その後も伸びる気配がないと「オワコン」と言っても良いかもしれません。
検索回数を見ると、どうやら
- 日本
- 世界
この両方ともメタバースへの注目度はそれなりに高そうです。
これでは「オワコン」とは言えません。
メタバースは明確に定義されていない
日本も含め世界中の人がメタバースについて、ある程度の関心を持ち続けていることがわかりました。
けれど、メタバースとは何でしょうか?
これについては、人によって言うことはバラバラです。
なぜなら、じつはメタバースには明確な定義がないからです。
だから
- 流行っている
- 終わった
以前に、何がメタバースかすら明確に決まっていないのです。
これではメタバースについて何か語ることは難しいです。
とはいえ、メタバースの定義が無いからオワコンかどうかわからない、では話が進みません。
なのでプロの意見、言い換えると「中の人」の意見を参考にしましょう。
日本国内のメタバース(と言われてるサービス)としてトップクラスの人気を誇るHIKKY(ヒッキー)というサービスがあります。
HIKKYのイベントには世界中から100万人以上の人が集まり、仮想イベントにおける出展者数のギネス記録を持っています[1]PR TIME:世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」がギネス世界記録™に認定!。
そんなHIKKYの運営会社の取締役である「動く城のフィオ」さんは、メタバースを
- オンラインゲーム系
- ブロックチェーン系
- VR系
この3つに分類しています[2]bizSPA!フレッシュ:うつ病&引きこもりから「ドコモ65億円出資」へ。メタバースで生活を変えた仕事人。
この分類を参考にして
「メタバースは誰もやっていない」
この説が真実かどうかをチェックしましょう。
3種類のメタバースのユーザーはどれくらい?
- オンラインゲーム系
- ブロックチェーン系
- VR系
この3種類それぞれで、代表的なサービスピックアップしました。
そして、サービスの利用者数を調べました。
オンラインゲーム系の代表的なメタバースはRoblox(ロブロックス)とFortnite(フォートナイト)です。
それぞれの利用者数は以下のようになります。
- Roblox→1日の平均アクティブユーザー5,880万人[3]Roblox:ROBLOX REPORTS THIRD QUARTER 2022 FINANCIAL RESULTS
- Fortnite→月間アクティブユーザー数はピーク時で6,200万人[4]Epic Games:2021年のEpic Games Storeの総括
Robloxの1日あたりのアクティブユーザー数は、イタリアの総人口と同じくらいです[5]外務省:イタリア基礎データ。
この数字を見ると
「メタバースは誰もやっていない」
というのは困難です。
次はブロックチェーン系を見てみましょう。
代表的なサービスはThe Sandbox(ザ・サンドボックス)とDecentraland(ディセントラランド)です。
- The Sandbox→月間アクティブユーザー数20万人以上[6]Deloitte:The Metaverse in Asia Strategies for Accelerating Economic Impact
- Decentraland→月間アクティブユーザー数56,697人[7]Mogura Vr:メタバース「Decentraland」のユーザーは“ちゃんといる”。「1日あたり38人」との調査結果に運営自ら反論、調査企業も誤り認める
オンラインゲーム系と比べるとかなり寂しい数字です。
とくにDecentralandの月間アクティブユーザー数はRobloxの約1,000分の1程度で、お世辞にも多いとはいえません。
VR系の代表格はVRChat(ブイアールチャット)です。
VRChatに関しては正確なユーザー数は公開されていません。
それでも2022年1月に同時接続ユーザー数が約42,000人に達した、と言うニュースが報道されています[8]Mogura Vr:ソーシャルVRアプリ「VRChat」基本的な始め方や必要な機器、おすすめワールドを紹介!【2022年7月版】。
この数字から月間アクティブユーザー数を推測するのは困難ですが、同じタイミングに同時に4万人もの人がログインしているので「誰もいない」とは言えなそうです。
全世界に公開していないとはいえ、月間アクティブユーザー数は20万人以下と苦戦しています[9]ウォール・ストリート・ジャーナル日本版:米メタのメタバース、成果は期待外れ 社内文書。
結局は定義の問題でしかない
3種類のメタバース全体のユーザー数を見ると
「メタバースは誰もやっていない」
と語るのは困難なことがわかります。
けれど、もしブロックチェーン系のDecentralandのユーザー数だけを見たらどうでしょう。
月間アクティブユーザー数6万人以下という数字は
「メタバースは誰もやっていない」
と判断できるものかもしれません。
つまり、結局のところ
「メタバースは誰もやっていない」
というのは定義の問題でしかないのです。
ピンポイントで
- Decentraland=メタバース
- Horizon Worlds=メタバース
と定義したら、誰もやっていないと言えるかもしれません。
けれど、これはRobloxやVRChatなどの人気サービスを無視した、乱暴な定義です。
とはいえ、メタバースの定義が定まっておらず、誤解や勘違いが生じやすいのも事実です。
定義に関しては、時間が解決してくれるのを待ちましょう。
定義が決まったときに初めて
- 人がいるor人がいない
- 終わったor終わっていない
- 役に立つor立たない
- 意味があるor意味がない
などを判断できます。
なので、今はまだ結論を出すタイミングではありません。
引用・脚注
↑1 | PR TIME:世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」がギネス世界記録™に認定! |
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↑2 | bizSPA!フレッシュ:うつ病&引きこもりから「ドコモ65億円出資」へ。メタバースで生活を変えた仕事人 |
↑3 | Roblox:ROBLOX REPORTS THIRD QUARTER 2022 FINANCIAL RESULTS |
↑4 | Epic Games:2021年のEpic Games Storeの総括 |
↑5 | 外務省:イタリア基礎データ |
↑6 | Deloitte:The Metaverse in Asia Strategies for Accelerating Economic Impact |
↑7 | Mogura Vr:メタバース「Decentraland」のユーザーは“ちゃんといる”。「1日あたり38人」との調査結果に運営自ら反論、調査企業も誤り認める |
↑8 | Mogura Vr:ソーシャルVRアプリ「VRChat」基本的な始め方や必要な機器、おすすめワールドを紹介!【2022年7月版】 |
↑9 | ウォール・ストリート・ジャーナル日本版:米メタのメタバース、成果は期待外れ 社内文書 |